父が死んでしまった夢を見た
原因はわからないが、突然の死だった
やけに気丈に振る舞う母の横で
私は慌てふためいている
「もうお父さんに会えないの???
もっともっと話したいことあったのに!」
やり場のない切ない思いに、夢の中で
居ても立ってもいられなくなっていた
目が覚めて、隣で眠っていた彼の名前を呼んだ
さっき見た夢の話をしているうちに
涙が止まらなくなっていた
彼は黙って私を抱きしめながら
また深い眠りについた
そうやって私達は結局
午後2時までベッドの中にいた
今朝はすさまじい喉の痛みで目が覚めた
隣にはやっぱりいつもの彼が眠っていて
のどが痛い、と私が言うと
ごそごそっとベッドから出て
はちみつ入りのハーブティーを淹れてくれた
そうして二人で雨の降る街を歩いて
お医者さんに診てもらって
薬局でおくすりをもらって
スーパーでしょうが湯を買って帰って来た
私は風邪だから大好きな銭湯に
今夜は行けないよって言ったら
彼はちょっぴりさびしい顔をして
私にキスを二度して、まだ降る雨の中
ひとり出かけて行った
ふたりで生活を始めて早5ヶ月
なんでもない日々が本当は
幾千もの奇跡でできていることを
わたしたちは知っている
こうして枕をならべて眠るのも
クリームシチューをすするのも
夜中にアイスバーを頬張るのも
中野の銭湯に続く細い夜道を
手をつないで歩くのも
駐車場の野良猫に餌をあげるのも
銭湯のテレビにかじり付くのも
マックでカフェラテを頼むのも
スーパーでポイントを貯めるのも
プラスチックのゴミを出すのも
みんなみんな、すこぶる大切な
かけがえのないふたりの日常